紅葉の街をいくつか歩いた。
色彩は私たちの生活に細やかな賑わいを見せる。
流れていく風、きらめく木漏れ日、さらさらと小さな音を立ててもみじの葉がざわめく。
誰もが今を生きるしかない。
豊かであっても、貧しくても、今を生きるしかない。
神社の灯篭は、訪れる人に等しくその幻のごとき明かりを届ける。
19世紀に統一されたイタリアは、長い期間にわたって小国が乱立する世界であった。
チェスのごとく、王や民衆や軍隊は想像の範疇で行動するものの、先を読むことはできない。
平成の社会は終わろうとしているけれど、未来を読むことはできない。
いつの時代も過去から繰り返されてきたことの反芻である。
高く空に向かって、赤色の葉が劈いていく。
地上の方では、七五三や紅葉見物の人たちで騒めいている。
私たちはどこに向かっているのだろう?
赤、人目をひく赤色、秋になって突然現れる赤色。
血管を切ってしまったかのように、突然辺りを染めてしまう。
黄昏時、漁火も赤々と燃え出し、夕方、海の色も少しの間、赤色に染まる。
紅葉は、我々が生きていることの証を、世界が赤色に染まって木々や私たちが生きていることの証を、垣間見せてくれる。