誰そ彼と我をな問ひそ長月の露に濡れつつ君待つ我そ(万葉集)作者不詳
誰だろうあの人は、と私の事を尋ねないで。長月の夜露に濡れながら、あの人を待っている私のことを。
黄昏時、そこにいる人が誰だか分からなくなる。私とあなたの区別がつかなくなってしまう。私とあなたは入れ替わる。金色の夕暮れが徐々に闇に呑み込まれ、そこに彗星が鮮やかな色に包まれて走り出し、舞い降りる。
『君の名は。』は、一夜の出来事を、過去と未来に結びつけ、人と人の心を結びつけ、優しく人の明日を未来を、希望のあるものに変えていく。
黄昏時、人と人の区別がつかないだけでなく、自分と世界の区別もつかなくなってしまう。夕暮れ時、私は世界との区別がつかなくなり、世界に呑み込まれ、動物や植物やあらゆるものと重なり合い、それを私は言葉に刻む。
『君の名は。』は、まさに黄昏時、創作された物語である。