ライサンダーとハーミア、オーベロンとティターニア、ディミトーリアスとヘレナの恋物語は、円満に解決を迎える。
妖精パックの媚薬に惑わされて、恋模様が混乱してしまうが、夏の夜の夢のごとく、3組の男女は上手く鞘に収まる。
K教授の英文学の夏休みのレポートに、シェークスピアの戯曲から二つ選んで分析せよという課題があった。
私は、マクベスと夏の夜の夢を選んだ。
暑い暑い夏の夜に、新潮文庫を広げて、何やらもっともらしいことを書いたと思う。
『夏の夜の夢』は、シェイクスピアの戯曲以上に名高い、メンデルスゾーンの音楽で広く知られている。結婚行進曲がその中の典型である。
メンデルスゾーン:真夏の夜の夢:結婚行進曲[ナクソス・クラシック・キュレーション #ゴージャス]
確か、映画『蒲田行進曲』でも使われていたが、この映画は、無理やり結婚させられる男女を描いた物語であった。
今朝、空に鱗雲が浮かんでいた。
夏至も過ぎ、立秋まであとひと月くらい。昨年あたりも7月はじめに鱗雲を見た覚えがある。
暑いなと思い始めるのも束の間、すでに季節は、夏の懐に秋を準備している。
現実と幻想、真実と嘘、現実と夢。
相対立しているように思える二項対立も、反転可能であり、現実が夢になり、夢が現実になる。
このことが、際立って明確に示されるのが恋愛だろう。
相手の心など、本当のところは確かめようがないし、何とも思っていない相手のことを突然好きになったり、お互いに相手を好きだと思っていても気がついたらそうではなくなったりする。
容易に、現実が夢になり、夢が現実になる。
さらに、これは恋愛だけではなく、この世のあらゆることが現実と夢の反転を引き起こす可能性に満ちている。
「何が現実か」など、判定できない。