待ちに待ったという感じではあるが、前の巻の発売から開きすぎているので、毎回刊行されるたびに、話がどんな風だったか忘れてしまっている。
今回も、えーっとなんだっけという感じで、kindle電子版の第9巻を読んでからの第10巻スタートとなった。
今回のメインストーリーでは、かの有名なカイロネイアの戦いが描かれる。
世界史の年号暗記で、「寒いや(338)カイロがないよ」「耳寒いや(338)カイロないよ」みたいに覚えた人もいると思うけれど、この戦いは古代史上、非常に重要な戦いである。
新興国マケドニアが、偉大なアテネを配下に置くことになり、アテネの凋落が決定的になった歴史的な戦い、その後、マケドニアがアレクサンドロス大王の元で、世界帝国を築く礎ともなった戦い、言わば古代史における天下分け目の戦いとも言える重要な戦いである。
前巻から続くカイロネイアの戦いを描いた本巻は、カイロネイアの戦いの推移を事実に則って、詳しく描き出している。
アレクサンドロスの初陣でもあるこの戦いは、アレクサンドロスの超人離れした行動の様を、漫画的にアレンジして、でもひょっとしてアレクサンダー王子はこういう感じだったのかも、と思わせるリアリティも匂わせながら描いている。
ともかく、『ヒストリエ』は偉大な作品だと思う。なかなか描き進められないのが、ファンとしてはヤキモキするところだが、これだけ緻密に大胆に古代史を描かれては、黙って次を待っているしかない。
主人公、隠れた英雄エウメネスの発掘をも行なっている本シリーズは、歴史マンガの頂点の一つとして、今後も読み継がれていくことになるだろう。