映画版「64」を見た。
数年前に見たテレビ版が良かったからだ。
原作は御巣鷹山の日航機墜落事故を描いた「クライマーズ・ハイ」の作者、横山秀夫。
テレビ版「64」で、ピエール瀧、新井浩文、平岳大の存在を知った。
迫真の演技で、その名前を記憶にとどめた。
映画版「64」も同じストーリーとは言え、見応えがある。
昭和64年、僅か7日間の昭和最後の年。
その1週間に誘拐事件が起こった。
警察内部の部署対立。
1989年は、昭和64年を通過し、平成元年へ。
1989年は激動の年だった。
天安門事件・東欧革命・ベルリンの壁崩壊・冷戦終結という大きな出来事が起こった。
昭和天皇が危篤になって崩御したことに始まる、1989年1月のざらついた、希望があるのかないのか、何か漠然とした空気感を、今でもよく覚えている。
昭和は終わり、長渕剛は「昭和」を歌った。
傷つけば傷つくほど大きくなれた
貧しさは大きな力になり
夜明け前の街が確かに動き始めている
とうとう昭和の歴史が終わった
昭和は多くの人が貧しく苦しい時代だった。
戦争と貧しさから脱却し、成長していった時代だった。
貧しさや傷心がバネになった。
「64」の中に一人の老人のエピソードが登場する。
誘拐事件から14年後、平成14年に交通事故で死んでいった銘川という老人のエピソード。
彼の人生もまた、昭和の歴史の一つである。
「銘川は北海道苫小牧の出身。家が貧しくて小学校もろくに通えず、職を求めて二十歳前に本県に出て来た。練り物の食品加工工場で定年まで四十年間勤務。以来、年金暮らし。八年ほど前に妻と死別。子供はいない。県内及び近県に身寄りもいない。自宅は長屋風の2DKで」
平成もあと数年で終わるという。
激動の昭和から、乾いた匂いのする平成へ。そして人工的な空気を漂わせる新しい年号へ。
時代はひたひたと、次なる時代へと走り続けている。