浦沢直樹展が大阪南港ATCであったので、その周辺を少しだけ歩いてみた。
大阪南港には、フェリーさんふらわあこばると号が停泊し、正面には工場の煙突から垂直に煙が立ち昇っている。ATC前の広場には家族連れやカップルがのんびりと、傾きかけた太陽の光を遮りながら、ボール遊びをしたり、散歩したりしている。釣りに夢中になっている休日フィッシャーも数人いる。
そうした風景を切り取ったのが、この写真である。
私としては、正面に聳え立つ煙突が気になって、何とか上手く撮れないか、近づいたり遠ざかったりしたが、それほど気に入った風には撮れなかった。
この工場の煙突と煙を見て、ジョルジョ・デ・キリコの描く絵を連想した。
キリコの絵にはなぜだかいつも、煙突・塔・銅像など、聳え立つオブジェが入り込んでいる。
有名な「街角の神秘と憂鬱」も影として銅像が描かれている。
私は、おそらく、あらゆる絵画の中でキリコのこの絵が一番好きである。
この絵を見ると、どこかで見たような懐かしい感じがすると同時に、長閑さの背後に張り付いた危機感のようなものを感じる。
不思議な絵だと思う。