毎朝、自宅を出ると、金木犀の匂いがする。その匂いは甘く、もうそんな季節かと確認してしまう。
その匂いが金木犀だと知らない頃は、一体この匂いはなんだろうと思っていた。どこから匂いがしてくるのだろうと思っていた。
金木犀だと知っている人ならば、周囲を見渡して、あそこに金木犀があると分かるのだが、知らないと首を傾げてしまう。
金木犀は匂いに比べて、外見は目立たないように思う。オレンジ色だしわかりやすいが、金木犀の木についている花は小さいから目立たないものも多い。
私は匂いから金木犀という植物を知った。
数年前に活動休止してしまったが、キンモクセイというバンドがあった。このバンド名の由来も、金木犀の匂いから来ているそうだ。
匂いというのは、不思議なものだ。長い間ずっと忘れていたことが、匂いを感じた瞬間、思い出したりするのだから。