『秒速5センチメートル』のキャッチコピーは、「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか」だ。
このアニメーションを見た人の中には、自分の経験と重なり合う人がそれなりにいるのではないだろうか?
概して、女性の方が男性よりも大人である。この映画もそうだ。女性の方は、過去の淡い恋心など振り切っている。女性は男性との関係を明確にしている。この人は友達、この人は恋人と。男性というのは、よく分からない。いつまでたっても幼い。
「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。どれほどの速さで生きれば、きみと通じ合えるのか」
この映画に関わらず、異性に思いを寄せる人たちは、一体、どんなリズムでその人に接していけば、こちらを振り向いてくれるのだろうと考える。映画の中に、「100回メールしても、1センチしか近づけない」という言葉が出てくる。どんなに努力しても報われないことはある。
この映画は、幼い時の淡い恋から、高校生、そして大人になった人たちの、切ない思いを描いている。それらを通過儀礼と言ってしまうのは、事の一つの側面しか捉えていないし、そもそも恋愛というものの一番大切な側面が大きく削り取られている。
恋愛とは、異性を好きになるということは、相手の生の中に自分の生を見出し、また自分の生の中に相手の生を見出すという、神秘的で、極めて実存的な有り様であるし、二人にとっては掛け替えのないものである。