ojos de perro azul:青い犬の目

青が好き。時々刻々と興味・関心が移ろいで行きますが、あまり守備範囲は広くありません、

シャイニング

先日まで、はてなの映画の夏と題するブログを募集していたが、私の長年のベストワン映画は『シャイニング』であった。中学生で見て以来、ずっと長い間、一番好きな映画だった。と言ってもホラー映画が好きなわけではない。ホラー映画は全く見ないし、気味が悪いから見たくない。

どうして好きなのか分からなかったのだが、とにかく好きだった。今も好きな映画ではあるが、数年前久しぶりに見て、少し古くなったように感じた。

つまらなく書けば、超能力を持つ少年が、ホテルに住む魔物に取り憑かれた父親から、母親とともに逃げ切るという物語だ。けれど、『シャイニング』は言葉では表現しにくいシーンが連続している。映画全体が不思議な不可思議な雰囲気に包まれている。

例えば、映画冒頭はペリコプターから撮影したシーンで始まる。空中から1台の自動車を見つめ追い越していく。このシーンにベルリオーズワルプルギスの夜の夢が覆いかぶさる。これから魔女たちの祝宴が始まることを告げているのである。

シャイニング [Blu-ray]

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私がこの映画を気に入っていたのは、色んなシーンに今までにないものを取り入れていて、その新鮮さに惹かれたのも理由だと思う。

先に書いた冒頭のヘリコプター撮影の映像に、キャストとスタッフのクレジットが流れるが、このクレジットの流れ方が、音楽と車の進行に合わせるかのように、画面下から上へ、クレジットも画面の構成要素であるかのように、サーっとただただ流れていくのである。こういうクレジットの流し方は見たことがなかった。

超能力シャイニングを持つ少年ダニーが、ホテルの中を三輪車で走るシーンがある。このシーンは、観客も三輪車と一体となって走っているかのような感覚をもたらす映像となっている。ステディカムという新しいカメラを使用しての撮影で、このカメラが臨場感をもたらしている。この映像も『シャイニング』が初めてだった。

俳優陣の鬼気迫る演技も、この映画の大きな魅力の一つだが、DVDに収録されている舞台裏を撮影したメイキングを見れば、どうして俳優たちがこうした演技を実現できたのかの理由を垣間見ることができる。

他にもまだ色々な工夫が施されているが、『シャイニング』は題材のホラーだけを追求した映画ではなく、映画というメディアの可能性を追求した隙のない作品だと思う。