昔、ベストセラーということで、村上春樹の『ノルウェイの森』を読んだ。面白かったし、若い人にはドキッとする表現も出てくるので、エンターテイメントとして楽しめた。でも、当時はそれだけだった。彼が書いていることの真意は分からず、だから『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』は何のことかさっぱり分からなかった。
私が村上春樹を理解し始めたのは、世の中にまみれ始めてからだった。それは、村上だけに拘らず、文学を歴史を哲学を人を、理解し始めたのと並行していた。
今日、たまたま散髪の帰りに書店に立ち寄った。安西水丸さんの本が目に止まり、購入した。私は彼のことを村上春樹の村上朝日堂で知った。面白い、他とは違った絵を描く人だなと思った。
この本で、水丸さんは自分の身の回りのこと、住んできた住まいのことなどをイラストとともに綴っている。
秋になると、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』が読みたくなる。そこに描かれた世界は全く架空の世界だけど、私にはその光景が現実のものとして浮かんでくる。静寂な世界と活劇の世界が交錯する不思議な物語。
ビートルズの『a day in the life』は、静かな日常世界とサイケデリックな世界とが地続きであることを示唆する。水丸さんはその風貌とイラストと静かな生活とは真逆の一面を有していたのだろうか?