小さな生き物とは、『小さな生き物』CD歌詞ブック表紙の金魚のこと(だけ)ではなく、私たち人間のことである。スピッツの歌詞では私たち人間のことを、生き物とか獣とか生物に喩えることがある。『醒めない』でも、1曲目「醒めない」の中に「単純だけど繊細な生き物」というふうに使われている。
日常的に、私たち人間のことを、生き物や獣とは呼ばない。ここに、スピッツの歌詞が詩であることが垣間見えている。草野マサムネの創る歌詞は、事実や感情をただそのまま描くのではなく、詩として、つまり、言葉でありながら言葉を超えていく表現として、描くのである。人間を生き物と記すことで、人間だけでなく様々な生命体を含めた中の一つとして、私たち人間が浮かび上がってくる。
『醒めない』は、生命体、生き物として有限な生の中にあるスピッツが、衝撃とともに出会ったロックという大いなる夢から、まだまだ醒めないで、これからもファンとともにその夢を育てていきたいという宣言から始まる。
小さな生き物からロックの夢を見る生き物へ。