今日は雨降りだった。夏頃の雨と聞くと、雨蛙を想像してしまう。木の葉っぱにちょこんと小さなアマガエルが乗っかっている姿を見たことがある。
英語の小説を初めて本格的に読んだのが、サマセット・モームの『雨』だった。ペンギンブックで、表紙に懐中時計が描かれていたと思う。長い間大事にしていたのだが、引っ越しの時に失くしてしまった。モームの小説は海の上が舞台というのが多い。この『雨』も船上が舞台である。モームの文体は一言で言うと洒落ている。日本の古典的な小説を読むのとは全く違う。
この小説の主人公は雨が原因で事を起こす。
- 作者: サマセット・モーム,William Somerset Maugham,中野好夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1959/09/29
- メディア: 文庫
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沢木耕太郎は雨が原因で、入社初日に会社を辞めた。雨が原因で会社を辞めるに至る経緯はあるのだが、雨というのは人の心を左右する。
「私は雨が好きだった。雨に濡れて歩くのが好きだったのだ。・・・そして私の格好といえば、着たこともないグレーのスーツに黒い靴を履き、しかも傘を手にしているのだ。・・・東京駅から中央郵便局に続く横断歩道を、丸の内のオフィス街に向かって黙々と歩むサラリーマンの流れに身を任せて渡っているうちに、やはり会社に入るのはやめようと思ったのだ、・・・」沢木耕太郎『246』
沢木耕太郎に対して、身体の強くなかった宮澤賢治は、東北の冷たい雨を恐れた。岩手山を愛した賢治は、雨によって登山をするかしまいか考えていた。
たむぼりんも遠くのそらで鳴ってるし
雨はけふはだいじやうぶふらない『小岩井農場 パート2』
雨という表象は、時折、私たちの前に立ち尽くして、私たちの心情をも揺るがし、困らせ、またなだめたりもする。しかし雨に出会う前に、無意識下で私たちの決定はすでに行われているのだと思う。それが雨に出会うことによって、意識に表れてくるのだろう。