1年くらい前から、訳あってBibleすなわち聖書を紐解き始めている。
ハイティーンの頃から20代の頃まで、西洋・近代を理解するために座右に置いていた聖書は、言わば他の歴史書のごときレベルの文献であり、辞書のような書物であった。
しかし、時間をおいて久しぶりに出会った聖書は別の顔を私に見せていた。それは、宗教的・心理的なレイヤーにおける聖書だった。
出エジプト記、レビ記、ヨブ記に映る旧約の姿は、嘗て憧れた古のオリエント世界ではなく、マタイ伝、ルカ伝、ヨハネの黙示録に映る新約の姿は、その壮大さに圧倒されたローマ帝国の世界ではない。
現在の私の目に映る聖書の世界は、過去や歴史や英雄の世界ではなく、現在における自己と他者の織りなす複雑な人間的世界である。
